A.SELMER　Super Balanced Action　Tenor Sax　Serial No：51XXX　【Vintage】

A.SELMER（アメリカン・セルマー）
スーパー・バランスド・アクション　テナーサックス　シリアルNo：51XXX　【ヴィンテージ】

アメセル スーパーバランスアクションのヴィンテージテナーサックスです。シリアルナンバーから1952年頃のものと思われます。サイドB♭キーの台座のハンダ修理やU字管などにヘコミ修理跡は見受けられますがいずれもしっかりと修理されています。その他はネックやベルフレアにも目立ったダメージはなくSBAのテナーとしては全体的に非常に状態の良いサックスです。

多少のラッカー剥がれはあるものの、大部分のオリジナルラッカーが残っておりこの年代ならではの非常に深みのある風合いを持ったラッカーの色は味わい深いものがあります。Low B、B♭のキーガードは一体型で、ネックのセルマーロゴはMk6と同様のプレートが採用されておりベル彫刻を含めてS.B.A.では後期の仕様になります。U字管まで施されたベル彫刻は細やかで丁寧な仕上がりで職人技が光るS.B.A.ならではの美しい彫刻は実に素晴らしいです。

こちらは委託品ですがオリジナルタンポを交換する際に元々装着されていたオリジナルのメタルブースターを交換後のタンポに移植しているようでサックスへのこだわりが感じられる調整です。パッドの状態も比較的良好ですので当面の間は交換の必要はないと思います。

大事に使われていたようである程度音が抜けていますがまだまだこれから吹き込んでいくことでより音色が育ってくる楽しみを持ったサックスだと思います。低音域から高音域までスムーズに音も繋がり、柔らかくファットさがありダークなヴィンテージサウンドが豊かに広がるS.B.A.ならではの音色が存分にご堪能いただけるサックスです。MkVIとはまた違ったセルマーサウンドで音の厚みが重厚過ぎずフワっとした甘い音といいますか芳醇な音色が広がり、息をたっぷりと使ってサブトーンを効かせた低音域は柔らかく図太さのある音色が周りを包み込むように響き渡り、時代を感じる雰囲気を持ったサウンドを生み出します。MkVIよりも音に軽やかさがありますがそれでいて音が浅いということはなく、絶妙な音の厚みと密度を持っているのもS.B.A.ならではだと思います。

より柔らかにファットさのある音色を求めてローバッフル系のラバーマウスピースを使うも良し、吹き応えと力強さや音の厚みを求めてメタルマウスピースを使うも良しのサックスですので、じっくりと理想の音を探しながらS.B.A.にしかないサウンドを楽しんでいただければと思います。

S.B.A.のテナーサックスは今や状態の良い物が激減している中でここまで状態の良い個体は日本はもとより海外を探しても滅多に手に入らないと思います。生産本数の少ないS.B.A.は今後益々入手が困難になることが予想され、特にテナーサックスは人気も非常に高く貴重ですので良い物があるうちに是非ご検討いただければと思います。名器と呼ばれるMkVIに勝るとも劣らない極上のヴィンテージサウンドを持った逸品です。今もなお多くのテナーマンを魅了し続けるそのサウンドを存分にご体感いただけます。弊社会長も自信を持ってお薦めする逸品です。


■委託品
■オリジナルラッカー
■マッチングネック（ネックと同一のシリアルナンバーが刻印されています）
■タンポ反射板：メタルブースター(オリジナルの反射板を移植しています)
■調整済み
■付属品：SELMER製ヴィンテージハードケース

【SELMER Super Balanced Action(通称S.B.A)について】
現在でもジャズプレイヤーに絶大な人気を誇るSuper Balanced Action（スーパー・バランス・アクション）は、テナーサックスではベン・ウェブスター氏やコールマン・ホーキンス氏、アルトサックスではポール・デスモンド氏などが愛用していたことで有名なBalanced Action(バランスアクション)の次のモデルとして発売された機種です。Super Balanced Action(以下省略してS.B.A)は1947年から1953年頃までの6年程度しか生産がされていない希少なモデルです。前モデルのBalanced Actionの主管キー配列がインラインに対し、S.B.Aからは主管のキー配列にオフセットが採用されました。オフセットが採用されたことにより、自然に左右の手を構えられるようになり、スムーズなフィンガリングが可能で操作性も向上しました。S.B.Aはジョン・コルトレーン氏が愛用していたことでも有名で、その独特のやわらかで艶やかな音色は同じセルマーのMkVIやMkVIIとはまた違った魅力を持っているサックスです。S.B.Aの前期の彫刻は豪華で美しい彫刻の物が多く、低音キーのキーガードはセパレートタイプになっています。S.B.Aの後期になってくるとMkVIの前期と同じような彫刻になり、低音キーのキーガードもセパレートタイプではなく、MkVIと同じような一体型のタイプになっています。ちなみに、一般的にアメセル（アメリカンセルマー）と呼ばれるモデルはこのS.B.Aから始まったと言われています。

S.B.AにもMkVI同様にフランスセルマー(フラセル)とアメリカンセルマー(アメセル)があり、それぞれに違いを持っています。ジャズマーケットを意識して生産されたアメセルはクラシックマーケットを意識して生産されたフラセルと比べるとラッカー塗装が薄く、その分管体の振動効率を損なわないため音の抜け、鳴りがよくなっています。また、アメセルは楽器を組み上げてタンポもつけた状態でラッカー塗装をしたため、オリジナルタンポにはラッカーがかかっているのも特徴のひとつです。ほかにもフラセルとアメセルとでは彫刻模様や調整など様々な違いがあります。